『七日の喰い神4』 カミツキレイニー ガガガ文庫
ガガガ文庫の『七日の喰い神4』読みました。
人を喰う「マガツカミ」を討伐する元祈祷士の青年古川七日と、可愛らしくも残酷な“喰い神”の少女ラティメリアが組んでマガツカミを倒していく、異種族バディダークファンタジー。
著者はカミツキレイニーさん。デビュー作の『こうして彼は屋上を燃やすことにした』は、痛々しくて感動的でストレートな青春ジュブナイル。すごく面白いのでそちらもおすすめです。
ギクシャクしだした七日とラティメリアの関係から始まり、前巻で登場した七日の戦時中の同僚、紙燭龍之介の真の目的が明らかになり、「六花のマガツカミ」にまつわる戦いも終わりを迎えるシリーズ最終巻です。
夢の中で龍之介と六花の約束、六花の最期の思い、ラティメリアが生まれた理由が明らかになるシーンから最期に七日がラティメリアに語りかけるシーン、熱いラストバトルまでの流れは感動的で本当におもしろかったです。
七日も龍之介もラティメリアに死んだ六花を重ね合わせていたけど、2人の違いは、最後に七日は「お前はラティメリアだ」と認めたのに対して龍之介は認めなかったこと、未来を見ているか、過去に囚われているかだったのかなと思いました。
本編は少し悲しい終わり方をしてしまうのですが、続くエピローグに伏線を回収する形でちょっとした救いがあってすごく良かったです。
最終巻でシリアスな展開が続くだけあって、イラストレーターのnauribonさんによる恒例の漫画は一本だけでしたが、挿絵に気合が入っており、最後の見開きイラストはとても印象的でした。イラストと話がこれ以上ないくらいマッチしたいいシリーズだったと思います。
シリーズ全体を通して見ると、「人間とマガツカミの関係」というのがこのシリーズの大きなテーマだったのではないかと思いました。1巻の「冷やし神」と友達になろうとした少女や「歌い神」の歌に魅せられた人々、2巻以降は人間が生んだ人間に近い六花のマガツカミたち、喰わないという選択をしたラティメリアや七日への信頼、自分をマガツカミだと言った六花など、様々な形の「人間とマガツカミの関係」が描かれています。
ストーリーとこの終わり方には素晴らしくて何の不満もありませんが、好きなシリーズだったのでもっと続いて欲しかったというのが正直なところです。とりあえずは次回作、来月ハヤカワJA文庫から出る『黒豚姫の神隠し』を楽しみにしています。
『七日の喰い神』シリーズ全4巻。一気読みする楽しさもあるのでまだ読んでない方も是非。おすすめです。