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ラノベの感想とか(予定)

『好きって言えない彼女じゃダメですか? 帆影さんはライトノベルを合理的に読みすぎる』 玩具堂 角川スニーカー文庫

好きって言えない彼女じゃダメですか? 帆影さんはライトノベルを合理的に読みすぎる (角川スニーカー文庫)

《あらすじ》スニーカー文庫公式サイトから

 

 無言の『好き』に萌え死に必至!? ちょっぴり不思議な青春ラブコメ

 無口・無表情・無感情と三拍子揃った少女・帆影に意を決して告白をする新巻天太。「恋人同士……よく解りませんが、それでよければ」どっちつかずな返事であるものの付き合い始めたはずだったが……。

 

 

 空行の下の追記まではほとんど動画と同じ内容です。

 


【#2】ラノベ考察系青春ラブコメ『好きって言えない彼女(わたし)じゃダメですか?』

 

 あらすじと実際読んだ感じでけっこう印象が違うので驚きました。話は、オタクの主人公が、オタク嫌いな妹にラノベの何がおもしろいか教えてって頼まれるというところで始まります。その理由が、親友にライトノベルについてどう思うか聞かれて、よく知りもしないのにバカにしたら、実はその親友がネットに小説を投降していて大喧嘩してしまったから。で、主人公は漫研の友達と、同じ文芸部で彼女でもある帆影さんっていうヒロインにも協力してもらって妹にラノベのおもしろさを知ってもらおうとするお話です。あらすじの印象と違うのは、妹の出番がかなり多いというところです。

 

 すごくおもしろかったです。3話構成で、一つの話の流れはだいたい、妹が「ラノベってこういうところあるけどどうかと思う」みたいなことを言って、その理由をみんなで考えていくっていう感じです。妹が言うのは結構ネット上とかで雑に語られがちな、「表紙で胸を強調しすぎ」とか「ハーレムものの主人公が、鈍感なのを理由にして何人もの女の子を侍らせるのは不誠実ではないか」とか「異世界ものが流行するのは現実逃避では」とか。

 ジャンルはラブコメでなんですけど、読書についての話でもあります。同じものを読んでもどう思うかは人によって違うじゃないですか。そういうところを人間関係とか出来事に、つまりラブコメ要素にうまく絡めて話づくりをされていると思いました。

 おもしろいのが、ヒロインの帆影さんのキャラクターです。無口で無表情だけど、独特の考え方を持った女の子で、妹のラノベへの疑問にすごい斜め上の方向からの考えを披露してくれます。さっきの胸の話については、動物としてのヒトの特徴とか、発達の過程とか、歴史上の人物なんかにも触れて最終的に「おっぱいは人類の本質」って結論づけたりとか。そういう変な視点を持ったヒロインから、繰り出される話がどんどん飛躍していくっていうのがおもしろいポイントだと思います。そして、それが全部肯定的な視点にもとづいているのでラノベ好きにとっては楽しく読めました。

 

 それから、ちゃんとラブコメもしています。一緒に買い物したりとか。最後に帆影さんの可愛さが爆発するシーンがあって、そこでもうすごいぐっときました。締めの言葉もめちゃくちゃ綺麗やし、最後まで読めばもう最高っていうか、このヒロインと主人公の仲を見守っていきたいっていう気持ちになって、続きが欲しくて仕方なくなりました。

 

 あともう一個続きが読みたい理由があって、この作品はシリーズを続けていくのが難しいと思うんです。なぜなら、作中で主人公たちが話に出した展開はもうストーリーでは使えなくなるので。実際、作中でハーレムものの話が出たけど、この主人公はメインヒロインとすでに付き合ってますし、おっぱいの話をしたからだと思うんですけど、この本はそこまで胸を強調した表紙ではないですし。だから、このラノベは自分が使える武器をどんどん捨てながら戦っていくことになるんじゃないかと思います。続けば続くほど話づくりが難しくなりそう。なので著者の玩具堂さんはどうしていくのか、そういう点でも続きが楽しみなので、ぜひ売れて欲しいなって思います。おすすめです。

 

 

 

追記

 

・妹の性格はちょっときついけど、結構なブラコンですよね。

・序盤は正直ちょっともたついている印象があった(第一話の冒頭、学校のシーンから始まって、すぐ回想でプロローグの続きに戻るところとか)んですが、どんどんおもしろくなっていって、最後のシーンはなにも気にならなくなるくらい最高だったので、本当に最後まで読んでほしいです。帆影さんの印象がガラッと変わります。

・著者の玩具堂さんは、名前は知っていたんですが初めて読みました。なんか、文章のセンスがいいなと思いました。エピグラフとプロローグの冒頭の文章がめっちゃお洒落で引き込まれました。

ラノベを題材にしたラノベも多くなりましたけど、そういう作品ってやっぱり著者がどれだけラノベをおもしろいと思っているか、ラノベ愛が試されると僕は思うんです。この作品からはかなりそれを感じたのでよかったです。

・今回は動画とほとんど同時にブログを更新できたんですけど、次以降はそうはいかないかもしれません。