ブログ 回るメロンパン

ラノベの感想とか(予定)

『黒豚姫の神隠し』 カミツキレイニー ハヤカワ文庫JA

黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

 ハヤカワ文庫JAの『黒豚姫の神隠し』読みました。

 

 沖縄の離島育ちで映画好きの中学生・ヨナは『オズの魔法使い』の映画を撮るため、主役として転校生の波多野清子に目をつけたことに始まり、「豚に呪われている」という清子や島の神々にまつわる問題を解決しようとするお話です。 

 

 著者はカミツキレイニーさん。今回初めてラノベレーベル以外から著作が刊行されます。先月にはガガガ文庫の『七日の喰い神』シリーズが完結しました。

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 今作は今までのカミツキレイニー作品を一冊に凝縮したような内容ですごく好みでした。今までの作品のどれかひとつでも好きな人にはおすすめです。

 

  波多野とヨナの家族がいっしょに食事をするシーンと、ニライカナイから帰ってきたあとからビンタまでの流れがおもしろかったです。

 「ちっぽけな人間が何かを変えるには、足掻くしかないのだから」という亀井のオバーの台詞が印象的。何かを変えたい波多野は足掻くこと、自分の意思をはっきり言うことで、ヨナや波多野の母親は気づいて力になることができたのだと思いました。

 結局、黒豚様(ウヮーガナシー)も「よどみ」も、正体は言われていたような恐ろしいものではなかったことなど、神様たちと人間は似たようなことをしていて、神は人間のそばにいるもの、人間に近いもの、という島の宗教観も納得できるものでした。

 

  爽やかなジュブナイルであり独特の雰囲気があるファンタジー小説でした。おすすめです。