『かりゆしブルー・ブルー』 カミツキレイニー 角川スニーカー文庫
角川スニーカー文庫の『かりゆしブルー・ブルー』読みました。
《あらすじ》スニーカー文庫公式サイトから
「人間の上でもなく、下でもなく。私たちのすぐそばにいるもの。それが沖縄の神々さ」
怪異を祓うため神々の住む島・白結木島を訪れた春秋の前に現れたのは、地元の少女、空。天真爛漫で島想い、どこまでもフリーダムな彼女に呆れる春秋だったが、空は神様との縁を切ることで怪異を祓う“花人”の後継者――春秋が島を訪れた理由そのものだった。未熟ながらも、島の人々とともに怪異解決に挑む少年少女の、沖縄青春ファンタジー!
このラノベは、イラストレーター白狼さんのオリジナルキャラクター「蒼囲空」にカミツキレイニーさんがお話をつける、という変わった成り立ちがあります。それで肝心の内容のほうはというと、正直最高でした。
まず主人公の春秋は呪いを受けているのですが、その内容が「いなり寿司以外のものを食べたら吐いてしまう」というもので、この時点ですでにおもしろいし、主人公はその呪いを解くために沖縄の白結木島という離島を訪れます。沖縄のおいしそうな食べ物がいっぱい出てくるのに春秋はそれを食べたら吐いてしまうという。また、沖縄に住む人々や日常にリアルな雰囲気があって、ここらへんは沖縄出身の著者が最近の作品で繰り返し書いている部分ですがやはり良かったです。
舞台の白結木島は架空の離島で、けっこう田舎なんだろうと思っていたらA&Wがあったりするので、本土の人が考える理想化された沖縄っていう感じだと思うのですが、それを沖縄出身の著者が書いているのはある意味すごいのかもしれない。
中盤以降はシリアスで、空が花人をしている理由を語るシーン、そのあとの春秋が祟られた理由である犯した罪と過去が明かされる回想、そしてそこから終盤までのたたみかける展開が特に素晴らしかったです。この回想シーンは同じ著者の『こうして彼は屋上を燃やすことにした』や『七日の喰い神』三巻を思わせるような甘酸っぱ苦い青春のお話で、ここが本当に良かったです。
結末の少し切ない感じと続きを予感させる終わり方に、まだこのお話を読みたいと思わされました。続刊出て欲しいけど一巻完結っぽいし無理かなあ。おすすめです。